この会話は、移住を考える人の疑問を説明するために構成したものです。登場人物は架空で、実際のインタビューや体験談ではありません。
転職だけじゃない。仕事には4つの道がある
移住したいと思ってるんですけど、正直いちばん不安なのは仕事のことなんです。転職しないといけないんでしょうか?
転職のほかにも、地域おこし協力隊として働く、今の仕事をリモートで続ける、移住して事業を始める方法があります。ここでは、この4つの道を比べてみましょう。
4つもあるんですね。どれが自分に合うかなんて、どう判断すれば…。
働き方によって、合う人も違います。一つずつ、実際の仕事や条件を見てみましょう。比べながら読むと、自分に近い道を見つけやすくなると思います。
| 選択肢 | 収入の安定性 | 向いている人 |
|---|---|---|
| ① 地域おこし協力隊 | 任期中は安定(自治体から支給)、任期後は自分次第 | 地域に飛び込んで働きたい、任期中に次を模索したい人 |
| ② 地方で転職する | 転職先次第で安定 | 地方に既にやりたい仕事・業界がある人 |
| ③ リモートワーク移住 | 現職継続なら最も安定 | 今の仕事・会社に不満はなく、場所だけ変えたい人 |
| ④ 移住して起業する | 軌道に乗るまで不安定 | 地域で事業をやりたい、リスクを取れる人 |
1. 地域おこし協力隊で、地域の仕事に関わる
地域おこし協力隊って、テレビとかで見たことはあるんですけど、実際どういう制度なんですか?
都市部から移住する人に、自治体が隊員として活動を依頼する総務省の制度です。地域おこしに関わり、自治体から給与や活動費を受け取ります。2025年度は全国1,187自治体で8,196人が活動し、6年連続で過去最多を更新しています。
年齢層はどれくらいの人が多いんですか?
20代が33.6%、30代が30.1%で、20〜30代だけで6割超を占めます。男女比は男性59.7%・女性40.3%。若い世代の第一の選択肢になっていますが、40代・50代の隊員も一定数います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 任期 | おおむね1〜3年 |
| 支給額の目安 | 隊員1人あたり上限520万円/年(令和6年度、特別交付税による自治体への財政措置)。給与・住居費・活動経費などに充てられる |
| 主な活動内容 | 地域PR、観光振興、農林水産業支援、移住定住支援など自治体ごとに異なる |
| 任期後の定住率 | 約7割(2020〜2024年度に任期を終えた8,762人のうち6,163人が活動地域に定住) |
支給額・活動内容は自治体・年度によって異なります。応募前に必ず募集要項を確認してください。
上限520万円って、それが隊員のお給料になるんですか? だとしたらかなり良い気がしますが…。
520万円は、隊員の手取りの額ではありません。2024年度の、国から自治体への財政支援の上限です。給与に当たる報償費などが上限320万円、残り200万円は家の借り上げ、活動の旅費、研修などに使う経費です。給与部分は年320万円が上限で、実際の支給額は自治体ごとに違います。募集要項の報償費の欄を、必ず読んでください。
なるほど、求人票の額面の見方が大事なんですね。副業はできるんですか?
副業の条件は自治体で違います。任期後の定住や起業につなげるため、認める自治体は増えています。ただ、自治体に雇われるか、個人事業主として活動を依頼されるかでも条件が変わります。募集要項と面談で確かめたいところです。
- 特定の業界・職種にこだわりがなく、地域に飛び込んで働きたい人
- 任期中に地域とのつながりを作りながら、次のキャリア(定住・転職・起業)を模索したい人
- 収入の安定と地域での活動経験を両立したい人
- 支給額の内訳(給与に相当する部分と活動経費)は自治体によって配分が異なる
- 任期終了後の生活は基本的に自分で用意する必要がある(定住するか、次の仕事を見つけるか)
- 活動内容によっては地域行事への参加など、私生活との両立に工夫が必要な場合がある
2. 移住先の会社で、仕事を探す
普通に地方の会社に転職する場合は、何から始めればいいですか?
地方の求人に詳しい転職サイトやエージェントを使う方法と、自治体のUターン・Iターン支援窓口を使う方法があります。両方を使う人も多いです。
自治体の窓口って、実際どんなことをしてくれるんですか?
都道府県ごとに「移住相談窓口」や「Uターン就職支援センター」を設けていて、地元企業の求人紹介や、就職フェアの案内、地方在住のまま使えるオンライン相談などをしています。地方に強い転職エージェント各社も、47都道府県別に求人を紹介する仕組みを整えています。
- 都道府県の移住相談窓口・Uターン就職支援センター(無料、公的な求人・支援制度の紹介)
- 地方特化型の転職エージェント(業界・職種別に非公開求人を保有している場合がある)
- 大手転職サイトの地方求人特集ページ
- ハローワークの地方版(地元企業の求人を幅広くカバー)
地方は都市部より求人の数が少なく、職種や業界によっては選べる仕事が限られます。移住先に、希望する仕事の募集がどれくらいあるかを先に見ておくと、思っていた働き方とのずれを防げます。
3. 今の仕事を、リモートで続ける
今の会社の仕事は気に入っているので、できれば辞めたくないんです。そのまま移住するのは難しいですか?
実はいちばん多くの人が理想として挙げる方法です。リモートワークに関する2026年の調査では、フルリモート勤務者の55.4%が「フルリモートで働ける仕事であること」を移住を実現する条件の1位に挙げています。ハイブリッド勤務者でも39.5%が同じ回答でした。
つまり、今の仕事がフルリモートでできるかどうかが一番の分かれ目ってことですね。
そうですね。会社に認めてもらう相談と合わせて、移住先の光回線やモバイル回線の速さ、オンライン会議ができる場所も考える必要があります。
- 会社の就業規則でリモートワーク・転居がどこまで認められているか
- 移住候補地の通信インフラ(光回線の提供エリアかどうか)
- 月1〜数回の出社が必要な場合、最寄りの新幹線・空港へのアクセス
- 地方移住支援金の対象条件(勤務先が東京23区にある場合などに適用されるケースがある)
4. 移住先で、事業を始める
移住を機に、地域で何か事業を始めたいという気持ちもあります。支援制度みたいなものはあるんですか?
代表的なのが、地域おこし協力隊の任期を終えた人向けの起業支援補助金です。任期2年目から任期終了翌年までに、活動していた自治体内で起業する場合、上限100万円の支援を受けられます。
協力隊を経験していないと起業支援は受けられないんですか?
協力隊を経験していなくても、自治体独自の創業の補助金や、日本政策金融公庫の創業融資などを使えます。ただ、協力隊向けほど移住した人に特化した制度は多くありません。地域の商工会議所や、自治体の産業振興課に相談するのが基本です。
- 任期終了日の前1年以内、または任期終了後1年以内に活動地の同一市町村内で起業すること
- 事業が地域活性化に資すると自治体・総務省に認められる必要がある
- 任期終了後3年以内に自己都合で市外へ転出すると、定住期間に応じて補助金の返還を求められる場合がある
自分の暮らしに合う道を、組み合わせてもいい
4つとも実態はわかったんですけど、結局自分がどれに向いているのか、まだピンと来ません。
移住の目的によって、向いている道は変わってきます。目安として、こんな傾向があります。
| 移住タイプ | 相性が良い選択肢 | 理由 |
|---|---|---|
| テレワーク移住 | ③ リモートワーク移住 | 現職を続けたい人がほとんど、収入の安定を優先しやすい |
| 子育て移住 | ② 地方で転職 / ③ リモートワーク移住 | 収入の安定を確保しつつ、子育て環境を優先したいニーズが強い |
| セカンドライフ移住 | ② 地方で転職(定年後の再就職) / ④ 起業 | 年金など他の収入源と組み合わせやすい |
| 起業・地域おこし移住 | ① 地域おこし協力隊 / ④ 起業 | 地域に飛び込んで新しいことを始めたい志向と直結する |
あくまで傾向です。実際にはひとつの選択肢に絞らず、協力隊として着任してから地域で起業する、というように組み合わせる人も多くいます。
「協力隊として着任してから起業する」みたいな組み合わせもアリなんですね。ひとつに決めきらないといけないと思ってました。
はい。任期中に地域の課題や人とのつながりを知り、起業支援金を使って独立するのは、よくある道の一つです。リモートで移住した後、地域に慣れてから地元企業に転職する方法もあります。最初の働き方と、その後の働き方は違っても大丈夫です。
ただ、収入の不安を後回しにしないことは大切です。移住してから何となく仕事を探すより、4つのうちどの道に近いかを先に考えておくほうが、暮らしの計画を立てやすくなります。
出典
- 総務省「地域おこし協力隊」制度概要ページ (参照: 2026-07-04)
- 時事ドットコム「『地域おこし隊』最多8196人 25年度、1187自治体で」 (参照: 2026-07-04)
- 総務省「地域おこし協力隊に関するよくある質問(FAQ)」 (参照: 2026-07-04)
- テレリモ総研「地方移住と地方でのリモートワークに関する調査」 (参照: 2026-07-04)