この会話は、移住を考える人の疑問を説明するために構成したものです。登場人物は架空で、実際のインタビューや体験談ではありません。
国、県、市町村の支援を分けて見る
移住するとお金がもらえる制度があると聞いたんですが、いろいろありすぎてよくわからなくて。全体像から教えてもらえますか?
国、都道府県、市町村に分けると、探しやすくなります。ニュースで見かける最大100万円は、ほとんどの場合、国の地方創生移住支援事業の移住支援金です。
| 階層 | 代表的な制度 | 特徴 |
|---|---|---|
| 国 | 移住支援金(地方創生移住支援事業) | 東京圏からの移住が対象。単身60万円以内・世帯100万円以内(都道府県が額を設定) |
| 都道府県 | 県独自の移住支援・上乗せ制度 | 国の制度への上乗せや、県外全域からの移住を対象にする県もある |
| 市町村 | 住宅取得補助・家賃補助・引越し費用補助など | 自治体ごとに内容も金額もバラバラ。移住先が決まったら個別に確認が必要 |
制度の有無・金額は自治体と年度によって異なります。必ず移住先自治体の最新情報を確認してください。
3階層それぞれで別々にもらえる可能性があるってことですか?
国の支援金と市町村の住宅取得の補助など、一緒に使える場合もあります。ただ、使える組み合わせは各制度の要綱で決まります。後の項目で詳しく見てみましょう。
まずは一番大きい国の移住支援金から知りたいです。
国の移住支援金は、額が大きい分、条件も細かく決まっています。自分は対象だと思っていても、条件が足りないことがあるので、次の項目で一つずつ確かめましょう。
今の住まいと、移住後の仕事は対象になる?
国の移住支援金って、誰でももらえるわけじゃないんですよね?
今の地域、移住先、移住後の働き方という3つの条件を、すべて満たす必要があります。今の地域の条件は、直前の10年間で通算5年以上、東京23区に住むか、条件不利地域を除く東京圏から23区へ通勤していることです。さらに、直近1年以上も在住・通勤が続いている必要があります。
「東京圏に住んで23区に通勤」でもいいんですね。てっきり23区に住んでいる人だけかと思っていました。
埼玉、千葉、神奈川などの東京圏から、雇用保険の被保険者として23区へ通勤していた方も、対象になる可能性があります。一方、23区に住んでいても期間が足りなければ対象外です。上限は世帯100万円、単身60万円で、具体的な額は都道府県が決めます。18歳未満の子どもと移住する場合は、1人につき最大100万円の加算もあります。
子ども2人の4人家族なら、100万円+200万円で最大300万円ですか。大きいですね。移住後の働き方の要件というのは?
働き方は、次のいずれかが条件です。道府県のマッチングサイトに、支援金の対象として載る求人で働く。テレワークで今の仕事を続ける。市町村が、地域と関わる「関係人口」として認める独自の条件を満たす。または、1年以内に起業支援金の交付決定を受けて事業を始める方法です。
テレワーク移住でも対象になるのは意外でした。今の仕事を続けたまま移住する予定なので。
今の仕事を続ける方には、大切な選択肢です。ただ、自分の意思で移住して以前の業務を続けることなど、細かな条件があります。自治体の要綱を読み、移住先に必ず先に聞いておいてください。
- 東京23区在住・通勤の期間が「通算5年以上かつ直近1年以上」に満たない
- 転職サイトで自分で見つけた求人に就業した(マッチングサイト掲載の対象求人ではなかった)
- 移住先が東京圏内(条件不利地域を除く)で、そもそも対象地域ではなかった
- 移住先の市町村が移住支援事業を実施していなかった(実施の有無は自治体ごとに異なる)
- 金額や要件は年度によって変わる可能性がある。必ず最新の公募要領で確認を
申請はいつ? 引っ越す前に準備を始めよう
実際に申請するときの流れを教えてください。移住してから市役所に行けばいいんでしょうか?
申請は移住後でも、条件の確認は移住前に必要です。とくに、移住先が事業を行っているかを確かめずに引っ越すと、ほかの条件をすべて満たしていても受け取れません。準備を後回しにしないことが一番大切です。
えっ、自治体によってはやっていないところもあるんですか?
はい。県と市町村が一緒に行う事業ですが、参加していない市町村もあります。また、求人の条件を使うなら、応募する前に対象の求人かを確かめる必要があります。就職を決めてから対象外と分かっても、間に合いません。
| 段階 | やること | 注意点 |
|---|---|---|
| 移住前① | 移住先の市町村が移住支援事業を実施しているか確認 | 自治体の移住担当窓口または公式サイトで確認。実施していなければ受給不可 |
| 移住前② | 自分が移住元要件(23区在住・通勤歴)を満たすか確認 | 住民票・雇用保険の記録で証明できるか。期間計算は窓口に相談するのが確実 |
| 移住前③ | 働き方の要件を確認(対象求人・テレワーク・起業) | 求人応募や退職手続きの前に対象可否を確認する |
| 移住 | 転入届を提出 | 転入日が各種期限の起算点になる |
| 移住後 | 必要書類を揃えて申請(転入後1年以内) | 就業証明などが揃うまで時間がかかる場合も。期限逆算で動く |
| 審査・支給 | 自治体の審査を経て支給 | 審査期間・支給時期は自治体によって異なる |
申請期限や細かい手順は自治体の要綱によって異なります。必ず移住先自治体の最新の案内で確認してください。
申請期限は転入後1年以内なんですね。それなら余裕がありそうですが。
申請できるようになる条件も、自治体で違います。仕事の条件を満たす必要があり、たとえば就業から3か月たってから申請する自治体もあります。仕事探しが延びると期限に間に合わなくなるので、転入したらすぐに、自分の場合はいつ申し込めるかを聞いておきましょう。
必要書類はどんなものを用意すればいいですか?
一般には、申請書、移住前後の住民票、就業や在職の証明、雇用保険の資格に関わる書類、本人確認、振込先の情報などです。テレワークなら、以前の業務を続けていることを、勤務先に証明してもらう場合が多くあります。必要なものは自治体で違うので、会社に頼む時間も含めて準備しましょう。
書類の様式は市役所でもらうんですか?
多くは自治体の公式サイトでダウンロードできます。自治体名と「移住支援金 申請書」で探すか、移住のポータルの制度ページを見てみましょう。記入例も合わせて読むと、書き直しを減らせます。
家や引っ越しの補助は、自治体で探す
国の移住支援金以外の、市町村独自の補助金はどうやって探せばいいんでしょう?
候補の自治体の公式サイトで、移住・定住のページを見てみましょう。家の取得、家賃、引っ越し代、子育て世帯のお祝いなど、街独自の制度がまとまっていることが多いです。サイト内で「移住 補助」「定住 支援」と探す方法もあります。
まとめサイトで「○○市は最大50万円」みたいな記事を見かけますが、ああいう情報を頼りにしてもいいですか?
まとめ記事は探すきっかけになりますが、最後は必ず公式情報で確かめてください。古い年度のままの情報も多く、また、補助は年度ごとの予算がなくなると受付を終えることが多いからです。制度はあっても、今年の受付は終わっていることがあります。
予算切れって、年度の途中でも起きるんですか?
人気の制度ほど早く埋まります。特に住宅取得系の高額補助は申込が集中しやすい。だからこそ、移住時期を決める段階で「使いたい制度の受付状況」を窓口に直接問い合わせるのが確実です。自治体の移住相談窓口は、制度の説明から申請時期の相談まで乗ってくれるところが多いですよ。
- 移住先候補の自治体公式サイトで「移住・定住」ページを確認する
- 都道府県の移住ポータルサイトで市町村横断の制度一覧を確認する
- 気になる制度は「対象要件・金額・受付期間・予算状況」を窓口に直接問い合わせる
- 申請のタイミング(転入前に申請が必要な制度もある)を必ず確認する
- まとめ記事の金額・要件は年度が古い可能性がある。公式情報で最終確認する
「転入前に申請が必要な制度もある」って、そんなパターンもあるんですか?
とくに住宅を取得・改修する補助は、工事の契約や着工の前に申請することが条件になりがちです。家を買った後で知っても遅い場合があるので、住まいの契約と、補助の確認は一緒に進めてください。
一緒に使える制度と、返すことになる条件
国の移住支援金と市町村の補助金って、両方もらえるんですか?
お金の出どころが違う制度なら、一緒に使えることが多いです。ただ、同じ費用について国の補助を重ねて受けられない、併用を禁じている、といった決まりもあります。複数の制度を使いたいなら、それぞれの窓口で組み合わせを聞くのが確実です。
わかりました。それと、一度もらった支援金を返さないといけなくなるケースがあると聞いたのですが…。
申請時に、移住先へ5年以上続けて住む意思があることが条件です。早く転出すると返す義務が生じます。多くの自治体では、申請日から3年未満の転出は全額、3年以上5年以内なら半額を返す基準があります。受け取る前に、必ず知っておきたいことです。
5年は長いですね…。転勤とか、想定外の事情で引越すことになったらどうなるんでしょう。
やむを得ない事情の扱いは、自治体の要綱と、一人ずつの判断によります。5年暮らすことが自分の予定に合うかを、受け取る前に考えておくことが大切です。転職や数年後の住み替えを考えているなら、返す可能性も含めて決めてください。
- 申請日から3年未満に移住先市町村から転出した場合(全額返還が一般的)
- 申請日から3年以上5年以内に転出した場合(半額返還が一般的)
- 就業要件で受給後、申請日から1年以内に対象の職を辞した場合(全額返還が一般的)
- 起業支援金の交付決定が取り消された場合
- 虚偽の申請だった場合(全額返還)
- 具体的な返還基準は自治体の要綱で違うため、申請前に必ず確認する
就業した仕事を1年以内に辞めても返還なんですね。移住後のミスマッチが怖いな…。
支援金のために、無理な移住や合わない仕事を選ぶと、目的が逆になってしまいます。先に街と仕事をしっかり選び、支援金は受け取れたら助けになるお金として考えるのが、健全だと思います。
確認する順番を、最後に振り返ろう
情報量が多かったので、最後に「結局どの順番で動けばいいか」を整理してもらえますか?
国の支援金は、移住前に調べ、移住後に申し込みます。まず移住先が事業を行っているか、次に自分の在住・通勤歴と働き方が合うかを確かめます。市町村のほかの補助の受付と申請の時期も聞き、転入後は期限内に申し込みましょう。
- 移住先の市町村は移住支援事業を実施しているか
- 自分は移住元要件(通算5年以上かつ直近1年以上)を満たしているか
- 働き方は要件のいずれか(対象求人・テレワーク継続・関係人口・起業)に当てはまるか
- 市町村独自の補助金の受付状況・申請タイミングを窓口に確認したか
- 返還条件(5年定住・1年就業)を自分のライフプランと照らして納得できるか
「移住してから調べる」だと、取り返しがつかないポイントがいくつもあるんですね。
自治体が事業を行っているか、求人が対象か、住宅の補助は契約前の申請が必要か。この3つは後から戻せません。制度は年度で変わるので、ここで流れをつかみ、金額と条件は移住先の最新の公募要領で必ず確かめてください。
ありがとうございます。まず移住先候補の自治体サイトと相談窓口から当たってみます。
それが一番の近道です。移住全体の段取りは「移住の流れ 5ステップ」、お金の全体計画は「移住 費用シミュレーター」のガイドもあわせて参考にしてください。
出典
- 内閣官房・内閣府 地方創生「移住支援金」 (参照: 2026-07-05)
- 地方創生「いいかも地方暮らし」移住支援金 解説 (参照: 2026-07-05)
- 広島県「令和8年度移住支援金制度について」 (参照: 2026-07-05)
- 高知県「地方創生移住支援事業(移住支援金)について」 (参照: 2026-07-05)